大道芸ワールドカップin静岡をご存知でしょうか。
アジア最大規模のサーカスフェスティバルです。世界中からたくさんのサーカスアーティスト、大道芸人が集まり、数日間に渡り、静岡のまちをパフォーミングアーツの世界に染め上げます。
今年で20周年を迎えた大道芸ワールドカップin静岡の観覧に今年も行って参りました。
もちろん、出演者の中には世界レベルで活躍をみせるジャグラーも数多くおり、濃密なジャグリングショーを目の当たりにして、興奮しっぱなしの毎日でした。
前回の記事で触れたように、ジャグラーとして活動して行く上で、名のあるコンテストやフェスティバルでアピールするのはひとつの方法です。
それは「ショーマン」として生きて行く上で外せない道です。
しかし、それだけが「プロジャグラー」の道でしょうか。
これまで個別のケースをもとに「プロジャグラー」を眺めてきましたが、改めて「ジャグリングを職業とする」ということを掘り下げて考えてみましょう。
そもそも「職業」とは何でしょうか。
辞書を引くと、おおよそ次のような意味が記載されています。
職業=生計を維持するために日常従事する仕事
仕事=何かをつくり出す、または、成し遂げるための行動
つまり、職業というのは何らかの「行動」によって価値を生み出し、継続的に「対価」を得る活動のことを言います。
そして、ごく大雑把に言って、「価値」は所属する「社会」(コミュニティ)への貢献によって評価されるでしょう。
「社会」の有り様は土地や時代によってまちまちです。
しかし、ウェブ、とりわけSNSの浸透により「社会」は数年前と比較して大きな変化がみられます。
「社会」の形成が物理的な距離、あるいは時間に縛られなくなっているのです。言うなればフラットになりつつ社会。
このような社会においては、個々が所属する世界が小さく、そして、複層化する傾向にあります。
たとえば、私はジャグラーであり「ジャグリング」というコミュニティに属します。
一方で、地元深川への愛着から「深川」というコミュニティにも顔を出します。また現在は1歳半になる双子を育児中ですので「育児」関連の話題にも興味津々。
趣味では「妖怪」だったり、最近は「仮面ライダーフォーゼ」が好きで、ついついこの手の話題には食いついてしまいます。「お酒」にも目がありません。それぞれのコミュニティへコミット
する深度は時期や気分によってまちまちですが、複数の「タグ」によって日々の活動が成り立っています。
複層化した価値観が交錯する社会の中で、ジャグリングで如何に貢献をして行くか。
現状では「パフォーマー/アーティスト」という方法が大部分を占めています。
「職業はジャグリング」と言っても、そのままパフォーマーを指すことがほとんどです。
しかし、単一の価値観ではくくれない現在そして未来であるからこそ、ジャグリングが職業として成立する可能性も大きく開かれています。
そのために必要なのは、職業の定義を鑑みて、「継続性」と「社会」からジャグリングを捉えることです。
「継続性」は、ジャグリングの需要の強さに依存します。
どれだけのジャグリング人口がいて、どれだけの経済力に支えられているのか。如何に継続して「ジャグリング需要」をつくり出して行くのか。
「社会」は時間とともに変遷して行きます。その中で、過去を踏まえ、現状を分析し、如何に先の流れを予想して行動を起こして行くか。
ターゲットとするコミュニティに求められるものは何か---それは顕在化している場合もあるでしょうし、表面化していない場合もあるでしょう---その意識を持って、ジャグリングと向き合って行くことが必要です。
以上のような観点からすると、「ジャグリング」を職業とする、もしくは「ジャグリング」を職業として成立させて行くには、2種類の仕事があります。
職業ジャグリング自体の「継続性」を確立させて行くものと「社会」に根ざした活動です。
もちろん、職業がすべてこのような2軸でスパッと割り切れる訳でなく、職業により5:5でまじっていたり、その割合が3:7だったりします。
これから数回にわたり、ジャグリングを職業にする、ということの現状と可能性を以下のようなトピックで具体的に探ります。
・大道芸
・ステージ
・講師(教える)
・舞台
・ジャグリング道具の製作・販売(売る)
・文筆業・批評
・プロデュース
・福祉/教育/ボランティア
職業=社会に貢献して生計を立てる術、と考えると、ジャグリングが社会に貢献する方法は、ここに挙げた限りではないでしょう。
本コラムを通して、「職業ジャグリング」について考えるきっかけになることを願っています。
ハードパンチャーしんのすけ
プロジャグラー。日本のデビルスティックのパイオニアとして、エンターテイナー、インストラクター、