「ながめくらしつ」をご存知でしょうか?
アーティスティックなジャグリングを魅せる目黒陽介氏が率いるジャグリングチームです。
メンバーにはミュージシャンも名を連ね、ジャグリングと音楽が有機的に融合した作品は独自の世界を構築しています。
3月23日~25日に東京都小金井市にある現代座ホールにて「ながめくらしつ」の公演が行われました。
待望の新作公演です。行われた4公演はすべて満員。
私が観に行った回は、初回でしたが、会場に充満する公演への期待を裏切らない、否、期待を上回る満足感を観客に残していました。
このように自分の作品をよい環境でたくさんの方に観てみらえる。
それは「舞台公演」を行うことの魅力のひとつです。
今回の当コラムでは、ジャグリングで舞台公演を行う、ということを私の経験に基づいて紹介します。
ジャグリングを舞台で演じたい。
ジャグリングを舞台で観たい。
プロジャグラーとして活動をはじめて、大道芸フェスティバルに出演させていただけるようになり、色んなパフォーマーのショーを観るようになってから、そんな風に強く思うようになりました。
しかし、当時の現状ではそのような場は皆無と言ってもよく---
「そうだ、自分でやろう」
ある朝起きたらひらめいた。
でも、自分ひとりで公演をうつのはちょっとハードルが高い。そこでオムニバス形式にすることにして、周囲のジャグリングや作品つくりに思いがあつい方々に声をかけせていただきました。
そんなちょっとした「思いつき」からはじまったのが、私の舞台公演企画です。
まずは会場探し。
ジャグリングは、ある程度の天井高が必要です。大きな会場を選べば、もちろん、天井高もある場所が多いのですが、その分たくさん集客をしないと客席がさみしい感じになってしまいます。
そう考えるとこじんまりとしたところがよい---私は「門仲天井ホール」という、自分にぴったりなホールが近所にあったので、迷わずここに決めました。
余談ですが、以来「門仲天井ホール」にはとてもお世話になっており、今毎月開催している「門仲ジャグリングナイト」というライブイベントは、このホールの存在なくしてはあり得ません。振り返ってみると、小さな選択が現在に影響しているのが実感できます。
私のスタートはオムニバス公演でしたが、長い作品に挑戦したい!という方もいるかと思います。ジャグリングの特性上、長い演目をつくるのは、卓越した技術はもちろんのこと、強い創造性が必要です。
ここで、私が感銘を受けた手妻師の藤山新太郎氏の言葉を紹介します。
「単なるネタの羅列だけでは10分持てば良いでしょう。それ以上の時間になると、観客にこの人(演者)とならずっと居てもよい思わせる個性が必要です。でも個性だけでは30分程度しか持ちません。それ以上、例えば2時間公演などでは内容として”ドラマ”が必要です。」(ジャグリング情報誌「ジャグパル」No.26より引用。※リンク先はPDFファイルです。ジャグパル)
「ドラマ」をつくる。
長い作品の創作を目指すのであれば、映画や小説などに日頃から触れて「物語」への理解を深める事は、よい訓練になります。
さて、内容が決まり、会場が決まった。今度はスタッフ探しです。
はじめての舞台で右も左もわからないところから私はスタートしました。特に音響・照明に関しては、まったく無知。友人の力を借り、劇場の方に協力を仰ぎ、専門の方にお願いしました。
わからないことは、わかるひとに相談する。
これだけでもスタートするハードルは大幅に軽減します。何かをつくるときは、ついつい力が入って自分で色々やりたくなってしまいがちです。気をつけましょう。(自分に向けたことばですね、これ。)
公演を企画しても、観客がいなければはじまりません。作品つくりと同じように力をいれなければならないのは広報活動です。
チラシをつくる。ウェブページをつくる。チラシを他の公演のプログラムに折り込ませてもらい、ウェブやマスコミなどに情報を流し、お世話になっている方々にお知らせしたり、ジャグリングクラブに直接足を運び宣伝させてもらったり。。。公演を知ってもらうために考えうることをどんどんやりましょう。
はじめのうちはとにかく「足」を使って地道に宣伝しました。
自分のブログにも公演にかける思いや、公演にまつわる出来事をたくさん綴りました。
プロモーション動画をつくる。ジャグリングを知ってもらうには、これが一番効果があるように思います。いかんせん、ジャグリングを観た事のない方は非常に多いのですから、実際にみてもらうのが一番。実際にみてもらう、という方向では、商業施設のステージでプレイベントを行ったこともありました。
数年前に比べると、いまはTwitterやFacebookなどのSNSがあり、舞台告知の方法もずいぶん変わったなぁ、と実感しています。当時と比べたら、格段に省力化できています。
とはいえ、実際に「足」を使うことが効果的なのは今も変わりありませんが。
そこで、ひとつ、方法は変わっても変わらずに肝に銘じている大切なことがあります。
「公演の顔」を明確に伝えること。
そのことを念頭において、出し惜しみせずに公演をアピールして行くことが広報の肝だと、今までの経験からも裏打ちされて思います。
公演をうつのは、チーム作業です。
作品をつくるひとがいて、出演するひとがいて、それらを舞台でサポートするひとがいて、広報を担当するひとがいて、、、
自分でできることはとても少ないけれど、それぞれの力を集めて、一丸となってあたらしいものをつくり出して行く。たくさんの準備を積み重ねて本番を迎える。こうしてみんなでつくった「作品」が、上演することで生命を与えられた瞬間 ---その喜びは、実に何事にも代え難い魅力があります。
「ながめくらしつ」のような素敵なジャグリング公演が、どんどんうまれたら、ジャグリングシーンはとてもたのしくなるでしょう。
貴方も自分のジャグリングを舞台上で表現してみませんか。そこにはきっと今までとはまた異なる深い喜びがあります。
ハードパンチャーしんのすけ
プロジャグラー。日本のデビルスティックのパイオニアとして、エンターテイナー、インストラクター、