プロジャグラーの仕事 プロデュース

第13回 プロジャグラーの仕事 プロデュース

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ジャグリングの10年後はどうなっていると思いますか。
(もしくは、どうなっていてほしいと思いますか。)



---この問いに答えられた貴方は、もしかすると、「プロデューサー」に向いているかもしれません。

以前このコラムでも書いたように、パフォーマーとして自立して行く場合、「セルフプロデュース」する能力は大切です。

この能力をさらに広げて、より大きな視点から「実現したい未来」をイメージし、具体的に形にして行くのが「プロデューサー」という仕事です。



「ジャグリング」に関することをプロデュースするなら、今なら正直やりたい放題です。プロデュースする素材はごろごろと転がっているのに、それが具体的な「形」になったものは非常に少ない。

自分がワクワクするものを形にできる。これはこの上ない興奮を味わえるチャンスです。



私自身、ここ数年のことではありますが、いくつかの企画をプロデュースし、プロデュースすることの面白さ、醍醐味を味わっています。

今回のコラムでは、そのうちの2つを取り上げて「プロデュース」することの現場をお伝えします。

門仲ジャグリングナイトの様子満員御礼 門仲ジャグリングナイト



・「門仲トークライブ」。
昨年末(2011年末)に開催したパフォーミングアーツに関するトークライブです。

発端はTwitterでの何気ないやりとりであったと記憶しています。それを形にしたのが、このイベントなのですが、「イベント」という形に仕上げたのには訳があります。
もしかすると震災も影響しているのかもしれませんし、それとは関係なく常にあったものなのかもしれませんが---

パフォーマンス業界の関係者の中に「閉塞感」とでも呼ぶような空気を感じる、という声を時に聞きます。出口を求めて何かしたい。何かを伝えたい。日常の微かな底流となっているそんな声を感じたので、オープンな場を設定することで、それを見える形にして「閉塞感」を打破するきっかけをつくろう。そう思ったのです。


開催して正直驚きました。予想以上の関心の高さに。

常日頃パフォーマンス業界のあり方について考えている方やベテランのパフォーマーの方々、そして、大道芸をいつも応援してくださっているお客様など、会場いっぱいに集まっていただき、様々な意見が交わされました。さらにウェブを媒体として行ったライブ中継もたくさんの方にみていただき、後日声をかけていただくことが何度もありました。


ジャグリングをみる。ジャグリングする。ジャグリングをみせる。門仲トークライブは、それらの間にある垣根を越えて場を共有することで、今ある問題にあらわにしつつ、新しい風が吹くのを感じるイベントになりました。
---とは言え、ここであぶり出された「問題」は、簡単に解決する類のものではなく、ひとつひとつ課題に落とし込み、継続的に次の動きにつなげて行く必要があります。「問題」を課題に落として、新しいものを生み出して行くことはプロデューサーの仕事です。



・「門仲ジャグリングナイト」
当コラムでも度々名前を出していますが、ジャグリングをテーマとした月一で行っているライブ企画です。この企画には2つの意図がありました。


1 日本のジャグリングレベルは日々向上しているのに、その出口が見えない。ジャグラーが活躍する場をつくりたい。
2 ジャグリングをきちんとみたことあるひとは、少ない。ジャグリングを日常的に気軽に観られる環境をつくることで、「ジャグリングを観に行く」というアフター5の選択肢を定着させたい。


まとめると、ジャグラーがジャグリングで生計をたてる道をつくるための取っ掛かりをつくる。そんな計画が背後にあるのが「門仲ジャグリングナイト」でした。

実は、このモチベーションは、ここ数年来常に頭にあったことでしたが、その回答が形になっていませんでした。しかし、それは2011年の1月3日、車を運転していて、絵が浮かんだんですね。

その浮かんだ絵を、いつもお世話になっている門仲天井ホールに相談すると、私のアイディアに上乗せする形で協力をいただけることになりました。門仲ジャグリングナイトの初回は2011年の4月1日。まさに震災直後でしたが、「こういうときこそ!」というホールの応援もあり、無事にスタートを切れました。

その後、門仲ジャグリングナイトは、幸運なことにお客様は毎回満員。集客面からは、少なからぬ方々にこの企画が求められていたことを実感できましたが、出演者集めには、度々苦労しました。やはり、お金を払って観に来た人たちの前でジャグリングをする、という場が少ない現状では仕方のないことでしょう。

まわりのパフォーマーに何度も助けられ、そして、門仲ジャグリングナイトへの出演呼びかけや周知を繰り返しながら、今に至っています。一年以上経た今は出演者も順調に集まるようになってきました。

門仲ジャグリングナイトでは、毎回、私自身ジャグリングへの新しい発見があり、たのしい時間を過ごさせていただいています。
---そんな門仲ジャグリングナイトも、この9/30に門仲天井ホールが閉館するために、一次休止します。非常に残念です。



そんな訳で、ただいま新しいジャグリングライブの企画を準備中です。

門仲ジャグリングナイトでひとつ心残りな点を挙げると、出演してもらったジャグラーの皆様への金銭的見返りがほとんどなかったことです。これは大きな目標から言うと、痛い事実です。ここをクリアする具体的なアイディアもあったのですが、、、新しい企画では、この点をきちんとクリアして、ジャグラーにとっても、お客様にとってもより幸せな時間を提供し、「ジャグリングを文化にする」ことへ一歩近付きたいです。




最後に、私がプロデューサーとして大切だと思う要素をまとめます。

・「今」(...に加えてそれと地続きとなる歴史)を踏まえて「将来」を想像すること。
・「将来像」というグランドデザインを念頭に、その実現を常に、そして、多方向から考える粘り強さ。
・企画を実現するために、適切にひとに頼ること。
・「企画」を的確に伝える力。


...と大上段に書いてしまいましたが、私自身、上記の事柄は大切だなぁ、と思いこそすれ、至らない部分がたくさん。何より、刻々と変化する「今」にアンテナを張りつつ、自分の軸を保つことは、自分自身の行動を常に柔軟に変化させて行かねばできません。私はそうありたい、と思います。


ジャグリングを社会にプレゼンテーションして行くのが「プロデューサー」。
ジャグリングの未来を切り拓くアクションをどんどん起こす方が増えて行くと、ジャグリングの未来は今よりももっと面白い。


ジャグリングの未来を貴方のアイディアで面白くしませんか。

ハードパンチャーしんのすけ

プロジャグラー。日本のデビルスティックのパイオニアとして、エンターテイナー、インストラクター、
プロデューサーとして、日本全国で活動中。
  • 【受賞歴】
    アクア大道芸フェスティバルふれあい賞(2002)
    日テレArtDaidogeiグランプリ優秀アーティスト賞(2004)
  • 【活動】
    ジャグリング講師---関東にて6教室展開中。
    ジャグリングイベントプロデューサー---現在は月に一回のライブ公演「門仲ジャグリングナイト」主催。
    被災地応援パフォーマンス団 代表---東日本大震災被災者に「パフォーマンスで笑顔を届けよう!」と
    プロジェクトを立ち上げました。 http://playforjapan.info
  • 【出版等】
    教則本「デビルスティック大全」
    DVD「FantasticDevilstick」
  • 【メディア出演・掲載】
    フジテレビ「笑っていいとも!」(2005)日本テレビ「赤鼻のセンセイ」(2009)NHK「極める!」(2010)
    読売テレビ「教育ルネサンス~東大解剖」(2007)サンデー毎日(2009)FRIDAY(2009)
    DVD『LICENSE vol.TALK SHINAGAWA』特典映像出演(2011)
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