先日「日本ジャグリング協会」が主催するジャグリングの全国大会がありました。
そこで行われたコンテスト「チャンピオンシップ」に審査員として参加してきました。
---あつかったです。
ジャグリングという競技は実に繊細。
その繊細さの中にドラマが詰まっていて、ファイナリストとなった方々のジャグリング技術が高いことと共にとても感動しました。
そんな場に居合わせたことに、とても幸せな気持ちになりました。
ジャグリングは本当に面白い。
さて、このコラムもちょうど折り返し地点に来ました。
今までは「プロジャグラー」という仕事にどのようなジャンルがあるのか、私自身の希望を含ませつつ書かせていただきました。
後半は、私がプロジャグラーとして歩んで来た経験を踏まえて、「プロジャグラー」として生きて行くことの実際について書いて行きます,,,が、その前にちょっと休憩。
今回はジャグリングをすることで得られる効能について紹介します。
限られた文字数での紹介になりますので、詳しくは紹介する文献を読んでいただけると幸いです。
デュアルスティックをするハードパンチャーしんのすけ
◆ジャグリングと脳の可塑性
ジャグリングを題材にして、脳の構造が変化することを示す研究結果が、2004年のNatureに掲載されました。それによるとジャグリングを3カ月間練習した脳を測定すると、視覚野領域の体積が増加したとのこと。
訓練によって脳の構造が変化するのは、ジャグリングに限らず、様々な活動でも言えることではありますが、アカデミックな現場でジャグリングが研究の手段として使われているのは面白いです。
ちなみに、3カ月ジャグリングを練習しても、その後何もしないと、脳は元の状態に戻る、とのこと。やはり継続的な練習は大切です。
参考文献
ターケル・クリングバーグ
新曜社
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※ジャグリングを用いた研究の元論文は
Nature 427(2004) 311-312 (上記資料より)
また、より最近の研究結果は、
Nature Neuroscience. 12:1370 -1371.Nature Neuroscience. 12:1370 -1371.
◆
うつ病
セロトニンは神経伝達物質の中でも、調整役となる物質。そして、神経伝達系のバランスが崩れる事でおこるのがうつ病。うつ病の治療に注目されているのがセトロニンです。そのセトロニン神経系は、リズム運動によって活性化されることに注目して、「お手玉」が治療の現場で使用されている例があります。
お手玉によるうつ治療に取り組む「ヘルスアートクリニックくまもと」(熊本市)中原和彦院長曰く---
「うつ病はストレスや疲労によって脳内の神経伝達物質(セロトニンやノルアドレナリンなど)のバランスが崩れて引き起こされる病気です。治療には脳の状態を整えることが必要です。それにはお手玉が一番。うつ病の患者さんは過去や将来にばかりとらわれて、“今”がない。お手玉をすることで“今”に集中でき、しかも左右の手を使うので脳のバランスが良くなるのです」
参考文献
中原 和彦
マキノ出版
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◆記憶力
記憶力を競う世界大会があるそうです。その会場では、競技に参加する多くが休憩時間中に「ジャグリング」をしているのだとか。
ノーベル賞を受賞するような科学者の中にも、ジャグリングを趣味にしていた方が何人かいます。
スポーツのコオーディネーショントレーニングのひとつとしてジャグリングが使用されている、という話もききました。集中力を高めるのにジャグリングを用いるのだそうです。余談ですが、私がジャグリングを始めたのは浪人生として過ごしていた頃。私の場合は、「たのしかった」というのが主な理由ですが、受験勉強の合間に行うジャグリングでリフレッシュでき、勉強に集中するのに大きな助けとなりました。
集中することとジャグリング。このふたつにはよい相関がありそうです。
参考文献
グンター カールステン
こう書房
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ジャグリングそれ自体、何も考えなくてもたのしいものですが、一歩ひいた目線でジャグリングをみてみると、今までとはまた違う風景が見えてこないでしょうか。
冒頭にあげたジャグリングのコンテストのような場所で競技者として取り組むこともできるし、今回取り上げたように自分の活動に引き寄せてジャグリングと付き合うのも素敵です。
もちろん、アーティスト、エンターテイナーとしてジャグリングショーを展開して行く道もある。
毎月思うのですが、このコラムが、ジャグリングとの付き合い方にふと思いめぐらしたときのヒントになれば幸いです。